婆ちゃんの恋物語

もう、慣れてしまったけれど、髪の毛の焼ける臭いは、何度嗅いでも、眉がよるんやわ。


地主の奥さんと別れて、家に向かってた。校庭をでる寸前に、

「キミちゃーん。」

千代ちゃんが、やっとみっけたと言う感じで、抱きついて来た
その様子に、何が起こったかぐらい推測できたんやけど
言葉にして、聞けへんかった。
聞くのが、恐ろしいいてね。

「お母さんが。起きひんねん。キミちゃん、起こしてみて、」

近所の家から貰って、持ち出したという、
掛け布団に、寝かされたお母さんは、昼間会うた時より、手の色が白くなってた。
千代ちゃんは、何度も何度も、揺すり起こそうとしていたけど、
わたしが、手を握ったら、脈が、打ってなくて、冷たい手が、悲しみを教えてくれるだけだった。
「キミちゃん、お母さん、起きひんやろ、なんでなん、
さっき、看護婦さんがなあ、漬け物の壷みたいな物と廃材を用意して言われてん。
お母さん、寝てるのに、亡くなりはった言うてん。」