婆ちゃんの恋物語

家族やら、近所の人が、その周りに立つて、天に昇って行く煙を仰ぎ見、声も出さず、涙が頬をつたうのを見て
なんや、その燃える火が綺麗でね。
不謹慎な事やけど、見とれててん


「キミさん。」

怒られるんや、
看護婦のあの人の声に似てたから、
体が、きゅんと縮こまってたわ。
振り返ったら、思いもよらない女性が、いはった。

「こんばんわ。」

「こんばんわ、火が悲しいでんなあ。」

「はい、お家は、どないですか?。」

「庭に焼火弾が、降ってきましてな。
使用人の山本が、運ばれて来ましたんや。
見舞いにきてましてん。
昭雄が、お宅を見に行って、誰も居はれへんから、
疎開してはるんかなあって、話してましたんやで、帰ったら、昭雄に知らせておきますわな。」

「昭雄さんは、?。」

聞いてもた後で、えらいこと聞いてもた。
相手は、昭雄さんのお母さんや。
なんや、この娘、行儀の悪いと思われたんちゃうかって、冷や汗が出そうになったてん。

「昭雄は、海軍の仕官学校に行きたい言うてたんです。
でも、昭一郎が殉職して、跡取りが、昭雄になったからには、死なす事は、出来しません。
家の蔵の下に、壕をつくりましてん
そこに、今、どうにか暮らしてますわ
なんや、あの火を見てたら、悲しいんやけど、
綺麗や思てしまいますなあ。」
地主の奥さんは、荼毘の光を見ながら話してくれはった。

青白く立ち上る。炎と煙