婆ちゃんの恋物語

人の事なんか、聞いてる場合違うのに、なんや、暖かい千代ちゃんの心に、くるまれた気がしたてん。

「家は、半焼やねん。お母さんとお婆ちゃんは、生駒山に疎開しょうって言うてたんやけど、
私が、学徒動員で、此処にいるから、
寝るときは、家の床下の、地下壕みたいな、物置に、三人で、寝てるわ。
お婆ちゃんが、つき始めの空襲済んで直ぐに、近所の大工さんに頼んで、掘って作ってもらったんよ。
町内の壕は、狭いし、息苦しい言うてね。」

「そこ、何を話してる。
早く交換して、洗濯しないと、替えがないんですよ。」
看護婦だと言う、中年の女性が、かなきり声で、声をかけてきてん。

「すいません、直ぐに行きます。」

「千代ちゃん、また、後で来るわな。」

私は、千代ちゃんにそう言うて、その場から離れたんやわ


夕暮れになって、家に帰る時間になった頃、壊れた家の木材を、かき集め、運動場で、何体もの遺体が、荼毘にふされて行く。