婆ちゃんの恋物語

回天乗務に、任じられ。帰還がかなわなくなりました。お約束を果たせず申し訳ありません。
あなたの幸福を祈っています。」

私、目の前で、目頭を抑えながら、朗読する奥さんを、茫然として見て、聞こえる声が、消えていきそうな感じになってたわ。悲しい気持ち、その時は、感じへんかったんやけど、
フッと、昭雄さんと目が合った時に、なんや、急に、グッと悲しくなってしまったんよ。
ついこの間の図書館での出来事思い出してね。
好きとか、言うのがこんな感じなんやなって、
なんとなく、感じた時、
生まれて初めて、男性に告白されて、嫁入りの話が、何となく、進んでて、私も、段々その気になってたんは、確かやったからね。
昭一郎さんの事、何も知らないまま、昭一郎さんが、私を見初めてくれた事実だけが、思い出になってしまったと思ったら、いつのまにか、頬に涙がつたってた。

「キミさんのお家に、また、お伺いして、ご両親に報告させて貰います、」

奥さんは、目頭を押さえている。
私、言葉が、でえへんかった。
深々とお辞儀するのが、せいっぱいで、