広い部屋、客間なんやろな。床の間に、高そうな置物に、掛け軸が掛かってる。
場違いなとこへ来てしもた。なんや、座ってる足が、こそばく、痺れて来て、深呼吸してみたら、微かに香ってくる、線香の香りが、心地よくて、居眠りしそうになったのは、工場作業の疲れやったんやね。
コクリ、コクリとした時、奥の襖が開いて、地主の奥さんと昭雄さんが、入って来はった。
「よう、お待ちでした。」
「お邪魔してます。」
「おざぶの上に座って、足が痺れへんようにして聞いて下さいな。」
奥さんの顔が、なんや、怖がった。
昭雄さんの真一文字に結んだ唇が、良くない事を告げられる事を告げてる気がしたから、私、俯いてしもた。
「キミさん、これ、昭一郎からの手紙です。」
封筒が、座卓に置かれた。茶色い封筒で、中から出しはった、便箋も、今みたいな、純白でも、和紙でもあらへん、ざら紙やった。
「読みますわな。」
奥さんが、静かに読み始めた。
「父上、母上様、私この度、回天に乗務する事になりました。お国の為に行って参ります。
明雄へ、私に変わり、父、母を支えて、私の分も親孝行を頼みます。」
「キミさんへ
前略、この度、山口県大津島に配属され。
場違いなとこへ来てしもた。なんや、座ってる足が、こそばく、痺れて来て、深呼吸してみたら、微かに香ってくる、線香の香りが、心地よくて、居眠りしそうになったのは、工場作業の疲れやったんやね。
コクリ、コクリとした時、奥の襖が開いて、地主の奥さんと昭雄さんが、入って来はった。
「よう、お待ちでした。」
「お邪魔してます。」
「おざぶの上に座って、足が痺れへんようにして聞いて下さいな。」
奥さんの顔が、なんや、怖がった。
昭雄さんの真一文字に結んだ唇が、良くない事を告げられる事を告げてる気がしたから、私、俯いてしもた。
「キミさん、これ、昭一郎からの手紙です。」
封筒が、座卓に置かれた。茶色い封筒で、中から出しはった、便箋も、今みたいな、純白でも、和紙でもあらへん、ざら紙やった。
「読みますわな。」
奥さんが、静かに読み始めた。
「父上、母上様、私この度、回天に乗務する事になりました。お国の為に行って参ります。
明雄へ、私に変わり、父、母を支えて、私の分も親孝行を頼みます。」
「キミさんへ
前略、この度、山口県大津島に配属され。

