母の声、縁側から、玄関を見たら、風呂敷にいっぱいなんか、包んで、両手で抱えて立ってる。明雄さんが立ってた。
なんやろか、私は、そろーっと、縁側から草履を履いて、覗きにいったんよ。
気になるんやもん。
「これ、食べて下さい。うちの母の実家から、送って来て貰ったんですが、ようさんあるんで、腐らしてしまう前に、すんませんけど、食べて下さい。」
「お芋に、お豆さん、こんなん、腐りませんやん。置いときはったらいいのに、ええんですか?。」
「はい、食べて下さい。」
覗いてた私の視線を、感じたんかなあ。チラッと私を見て、笑ってくれた。
「キミ、何を覗いてるん。はしたない。」
お母さんが、私に気づいて、声を荒げはった。
「ごめんなさい。」
「ほんま、行儀の悪い、こんな娘が、ええ言う昭一郎さんの気がしれませんわなあ。」
「なに、言うてるん、」
「壕で、地主の奥さんに会った時に、昭一郎さんが、気にかけてるって、帰還したら、挨拶しに行きますって言いはったん、あんた、聞かなんだん。そうでしたな。明雄さん。」
「はい。」
えらい、話が進みすぎやわ。
私の返事は、
「はい。」
しかないみたいやん。
確かに、昭一郎さんは、私には、申し分ない人やけど、なんや、ピンとこうへん。他人事みたいに、耳に入ってる。
自分の気持ちが、ようわからないまま、4月になって、女学校に上がったけど、戦時中やから、勉強どころやなくて、工場で、鉄の選別をさせられていたんよ。
鉄鍋、お寺の鐘、鉄包丁、錆びた鉄の玩具。何のネジか、わからん鉄のネジ、鉄箸、色んなもんが、工場の中に運ばれて来てた。鉄砲の弾丸を作る為らしい。
朝から夕方まで、選別に追われて過ごし、皆目勉強なんて出来ひんかった。
なんやろか、私は、そろーっと、縁側から草履を履いて、覗きにいったんよ。
気になるんやもん。
「これ、食べて下さい。うちの母の実家から、送って来て貰ったんですが、ようさんあるんで、腐らしてしまう前に、すんませんけど、食べて下さい。」
「お芋に、お豆さん、こんなん、腐りませんやん。置いときはったらいいのに、ええんですか?。」
「はい、食べて下さい。」
覗いてた私の視線を、感じたんかなあ。チラッと私を見て、笑ってくれた。
「キミ、何を覗いてるん。はしたない。」
お母さんが、私に気づいて、声を荒げはった。
「ごめんなさい。」
「ほんま、行儀の悪い、こんな娘が、ええ言う昭一郎さんの気がしれませんわなあ。」
「なに、言うてるん、」
「壕で、地主の奥さんに会った時に、昭一郎さんが、気にかけてるって、帰還したら、挨拶しに行きますって言いはったん、あんた、聞かなんだん。そうでしたな。明雄さん。」
「はい。」
えらい、話が進みすぎやわ。
私の返事は、
「はい。」
しかないみたいやん。
確かに、昭一郎さんは、私には、申し分ない人やけど、なんや、ピンとこうへん。他人事みたいに、耳に入ってる。
自分の気持ちが、ようわからないまま、4月になって、女学校に上がったけど、戦時中やから、勉強どころやなくて、工場で、鉄の選別をさせられていたんよ。
鉄鍋、お寺の鐘、鉄包丁、錆びた鉄の玩具。何のネジか、わからん鉄のネジ、鉄箸、色んなもんが、工場の中に運ばれて来てた。鉄砲の弾丸を作る為らしい。
朝から夕方まで、選別に追われて過ごし、皆目勉強なんて出来ひんかった。

