婆ちゃんの恋物語

「で、それから、昭一郎さんに会った?。」

「会ってへんよ。」

「キミちゃん、どうなん?。」

「どうって?。」

「源氏の君に告白されたお姫様の気分違うん。」
千代ちゃんは、少し焼きもち焼いてたんやろなあ。昭一郎さんと昭雄さんが、声をかけて来た話をしたら、少し、むくれてた、美人の千代ちゃんにしたら、本に落書きを見つけてから、ずっと自分宛だと信じていたんやね。私も、千代ちゃんだと思ってたんよ。

「そんなことあらへん。」

そう言う言葉しか出なくて、ね。女友達って、恋のライバルになると、ほんま、疎遠になるんよね。喧嘩した訳やないんやけどね。


私は、好きとか、恋とか、ほんま、実感がなくてね。何となく、ぼーっとあの二人の姿を思い出したりしてたわ。まあ、それも、後で、恋やて。わかったけど、

卒業式は、お雛さん済んで、三日後ぐらいやった。千代ちゃんとは、話もせずに、別れてしもて、後悔して、式が済んで、家に帰らんと、千代ちゃんの家に寄ったんよ。


「こんにちわ、」

「あっ、はーい。」

千代ちゃんの、お母さんの声やった。
開いた玄関の奥から、白い割烹着を着てお母さんが、顔を見せて、私を見るなり、高い声で、千代ちゃんを呼んでくれた。
「千代、キミちゃん、来てはるよ。出てきなさい。」


「今日、話しできひんかったから、明日から、学校ないし、4月から学校違うから、会われへんようになるし、今日、話しとかなあ、あかんと思って来てん。」

「キミちゃん?。」

「小さい時から、ずっと一緒やったやん。でも、学校、今度変わるから、会えないやん。会えないけど、私、千代ちゃんと友達でいたいんよ。」