「千代ちゃんのお姉ちゃんは、女学校出たら、尋常小学校の先生になるん?。」

「どないやろな。なんや、嫁入りの話が、出てるみたいやわ。」


1943年(昭和18年)冬の図書館は、冷えこんで、こそこそ話す、二人の息が、白く交差したわ。

「誰と?。」

「遠縁のお兄ちゃんが、学徒動員で、海軍に入るから、船に乗る前に、結婚させるって話なんよ。」

「お国の為なんやね。」

「そうやね。」

「自分の夢なんて、話してたら、憲兵に連れていかれるわ。」


図書館の本、新刊なんて有るはずもなく、反戦思想の本もどこかに、消えて、私たちが、好んで読んだ。短歌や、和歌の本も、本棚から消えていた。
珍しく、1冊、2冊消えずに済んだ、私の愛読書、此処に来たら、私か千代ちゃんが、必ず勉強の合間に読んでいる。

「あっ、この本、落書きやん。」

源氏物語の本の片隅に、若紫の章のところに、鉛筆で、

「貴女が、この本を読んでる姿が、