俺の親父はちょっとした写真家だったらしい。
名の知れた有名人ってまでではなかったみたいだけど。

親父の撮った写真……小さい頃によく見てたな、そう言えば。
よく俺も撮ってくれたっけ。

――!

昔から大事にしている写真がある。
家族三人で写っている写真。
俺が居て、親父が居て、お袋が居る……。
こんな当たり前の時間。
だけど今の俺にはもう訪れることはない。

ふと写真を裏返すとそこには――。

親父の字で……、

『千晶 五歳 大きくなれ』
と書いてあった。

「親父……」


『千晶も絶対才能あるよ……カメラの。

お父さんと同じ道、進んでみてもいいんじゃない?』


薫の手紙のあの言葉が頭の中を過ぎった。

「……カメラ……か」
親父の唯一の形見。

俺は屋敷を飛び出し薫のばあちゃんの家に向かっていた。

カメラがほしいというよりも、
親父の残してくれた形見だったから……それに触れたかったから。


運命――。


『それは自分で掴みとるもの』

これは俺の持論だ。
だからこそ誰かのために何かのためにじゃなく、
自分のために己の意志で道を開くべきなんだ。