気まぐれお嬢様にご用心☆

「わりぃ、翼!先に教室戻っててくれ、さっき藤崎センセに呼ばれちゃって……職員室寄ってくから」

「はいはい……せいぜい怒られないないようにね」

「うるせぃ」

大方見当は付くが……多分『成績表』のことだろうなぁ。
はぁぁぁ……気が重。

「っ……春日!?」

「千晶……先輩?」

職員室の前の廊下で俺は彼女がこっちに向かって歩いてくるのを見つけた。
その足取りは危なげない。

「……大丈夫か?」

「はい。一人で歩くのは恐いですけど大夫慣れてきましたよ、ほらっ!この通り!!」

「無理するなよ」
俺には彼女が無理して明るく振る舞おうとしているのが分かったから。

「……先輩、私……私ね、四月から転校することにしたの。盲目でも通える施設の充実している高校に」

「そうか――」

「やっぱりこんな私が普通の子と一緒に生活するのは無理なのかなって」

「……お前はよく頑張ったよ。それは誰よりも俺は知ってるつもりだ。そんなお前ならどこに行ってもやっていける、絶対に大丈夫!だから自信を持て!!」

「ありがとうございます。これからも頑張ります!!でも……今は」

「……春……日?」

「っうっううう……もう少しだけ……このままで居させて下さい」

彼女の涙で俺のブレザーが濡れているのが分かった。
この涙にはいろんな想いが詰まっていて――。

「ああ……」

無意識に俺は彼女を優しく抱きしめていた。