「お前の場合はじいちゃんのコネとかでなんとかなりそうだけどな」

「そういう部分では千晶だって同じじゃない」

「俺は……高校卒業したら屋敷は出ようって思ってる」

「えっ?!」

「これ以上、じいちゃんには迷惑かけたくないんだ。高校を卒業すれば世の中では働くこともできるからな」

「千晶は『夢』あるんだ……?」

「いや、特にないよ。『夢』は自分が頑張ってどうにかできるものと、自分の頑張りだけじゃどうにもならないものがあるからな」

「だからこそ人は『夢』を抱いて追い続ける……か」

「これからゆっくり見つけるよ、自分の『夢』をな」

風がふわっと吹いて咲いたばかりの桜が一生懸命耐えていた。
枝から落ちないように……。

桜の花は咲くのに一年かかるのに、咲いてしまうとその命は儚く短い。
だからこそ余計に綺麗に思えるのかもしれない。そうやって何百年、何千年も人々の心を癒してきたんだなぁ。
空を見上げると青空が高く、どこまでも澄んでいた。