「波柴~っ!おかしいなぁ~どこ行ったんだ?買い出し頼もうと思ってたのに」
明日使う食材の追加やら、実行委員会用のペットボトルのお茶、お菓子などずらっ~と書かれたリストがそこにはあった。

「藤崎先生、誰かお探しですか?」

「柚木――お前、波柴見なかったか?」

「あっ……」

「何か知ってるな」

「いや~その……えっと……」

「ゆ~ず~き!」

「……はい」



一方、その頃俺はと言うと。

「私、高校卒業したら結婚させられるの」

「……結婚?」

「許嫁がいるんだって。その人と会ったことも無いのに――、おかしな話よね。今時、こんな家系もあるのよ……笑っちゃうわよね」

「……」

「会ったこともない人と結婚するなんてイヤ!私だって普通に恋愛したい、誰かを好きになりたいの!!決められた運命のレールをただ歩くだけなんて真っ平ごめんだわ!!」

「……千種……さん」

「明日、食事会があるの。そこで正式に決まるわ、だからあなたに私と一緒に来てほしいの!嘘でもいい、恋人として。この婚約を取り消すために力を貸してほしいの!!」

「……なんだ、そんなことか」
待てよ、前にもこんなことあったよな。

「?」

「要するにお前の恋人として振る舞えばいいんだろ」
確か、楓と……。

「うん」

「困っている人を見ると助けてやりたくなるのは……俺の性分でな」
ま、いいか。この際、細かいことは。

「引き受けてくれるの……?」

「しょーがねぇだろ。ここまで理由聞かされたら断る訳も思いつかねぇし」

「ありがとう」

「ほんじゃま、商談成立ってことで、そろそろ俺も戻らないと……」


「あなたもコンテスト出るの?」
改めて俺の顔を見て彼女が呟いた。

「ああ……アレね。まぁ、出るというか出らざるおえなくなったというか」

「私もあなたに一票入れてあげる」

「一票って……?」

「じゃあね!!千晶っ!!」

千種茜。
どこかで聞いたことある名前だと思ったけど――。


『一票入れてあげる』


そうか……、
ウチの学園の『生徒会長』だ。