「学園祭?そう言えばそんな時期かぁ~」

登校途中、俺は下駄箱のところにある校内掲示板を見て呟いた。

『十一月十四日(土)、十五日(日)、十六日(月)

清華女子学園高等部 学園祭
【秋桜祭】開催!!』

美術部が描いたような手書きポスター。
活字で印刷されたものより、一層味わいがある。


「いけね、急がないと、遅刻だ」
見とれている場合ではないのだ。俺は教室へと走る。

──部活に所属していないし学園祭と言えど、関係ないと思っていた。

しかし、

人生そんなに甘くはなかった。



「我がクラスを代表してお前を学園祭実行委員に任命する!しっかり頼むぞ!」

へっ?!

昼休み、ウーロン茶を買いに行こうとしている俺は、廊下で翔さんに捕まってしまう。
「それは決定事項なのでしょうか?それともまだ選択の余地が……?」

「残念ながらもう変更はできない、これは担任命令だ」

あのなぁ~そういうことは勝手に決めるな!つーか、一言くらい言ってくれ!

「イヤです!絶対そんなの引き受けませんからね!」

「そんなこと言っていいのかな?」

……そうだ、俺は秘密を握られているんだった。

「人の弱みにつけ込むなんて卑怯ですよ」

「お前は俺と一緒にあの屋敷に住んでるしな、それに部活にも所属してなくて暇そうだし……俺にとっても一番、都合がいいんだよ」

「都合?」
『暇』は余計だっての。

「そう!俺が実行委員会の責任者になってるから、よろしくな!千晶!」

なるほど、そういうことですか……。
この実行委員を引き受けた時点で俺は翔さんのパシリ決定──となる。

そんなことは百も承知なのに、秘密を知られている以上、断ることは絶対にできない。断ったらどんなことになるのか……想像するだけでも恐ろしい。

ああ──これぞ悲しき『運命』。