「お帰り、千晶。どうデートは楽しかった?」
出迎えてくれたのは翼だった。彼女の問い掛けに当然、俺は言い訳できるハズもなく、

「デートというほどのものじゃないけど……ちょっと『海』までな。それに伶も居たから三人だったし」

「ふ~ん……」
彼女は不満げな表情を浮かべていた。

「安心しろ、俺の一番はお前だから」

「……またそうやって~ズルイよ、千晶は」

「ズルイ?」

「そう、お前が好きだとか一番だとか言って誤魔化すんだもん」

「じゃあ、どうしろって言うんだよ」

「キスしてくれたら……信じてあげてもいいかな」

「ば──か、そういうことは……」

「……千……晶?」

「早く言えよ」

重なる口唇と口唇。
静かに時を刻む瞬間──。



それから……三日後に春日の目は見えなくなった。

高校も彼女の意思で通い続けることとなり、学校側もそれを承諾するかたちとなったらしい。

取りあえず、彼女がこの学校に残れることだけでも、よかったと思っている。

あの『海』を俺は忘れない──。