が、しかし……。
俺にはもう一つの使命がある。なんとしてもこれだけはあいつに言わなきゃいかんのだ!

「か~え~で!!」

「ハロー~っ!千晶」

「ハロー……じゃないっ!お前はどんだけ俺をオモチャにすれば気が済むんだ!」

「なんだ、もうバレちゃったんだ……つまんないの」

つまらない……?

「お、おのれ~っ!俺の心を弄ぶのがそんなに楽しいのかっ!」

「うん、楽しい」

ダメだ……。
完全に俺はこいつに振り回されている。
……オモチャになっている気がするぅ~っ!この悪魔から逃れるにはどうしたらいいんだぁ~っ!

「とにかく!もう俺はお前に騙されないからな!おっ、覚えておけよ!!」

「私が千晶の全てを知ってることもお忘れなく!ふふっ」

悪女め~……。

今までの楓との想い出が頭の中を駆け巡る。現時点で顔を赤らめて、恥ずかしくなっている俺は、彼女には絶対勝てないと感じていた。
全く、油断も隙もあったもんじゃねぇ!
これからは特に楓には気をつけないと俺の身が持たん……。
そんなことを考えつつ廊下をとぼとぼと歩いていた。

「はぁぁぁ……」

まさに溜息をついた瞬間だった。
曲がり角で走ってくる音に気付かなかった俺は一人の少女と正面衝突してしまう。

ドンっ……。

「痛~いっ!どこ見て歩いてるのよ!」

「イテテテ……あんだとっ!それはこっちの台詞だ!」
身長差があったせいで、俺の胸あたりに思いっきり体当たりして、彼女は床に倒れた。