なっなんなんだぁ~!

ああ……もう限界。ツイていけん……。
だから今時の金持ちは──。
ってか楓のやつぅ~!

本気にしてしまった俺が一番悪いのか?!
いや、あれを本気と取らずにいられる男が居るのかっ!


「ブツブツ独り言言ってねぇで、早く翼のとこに行ってやれ。手遅れになる前になっ」
翔の手から放たれた何かが宙に弧を描く。
俺は見失わまいとしっかりとキャッチする。

「……鍵?」

「貸してやるよ、誰も居ない方がいいだろ?」

俺は一礼すると走り出した。翼に嫌われているかもしれない。けれど今はそんなことはどうでもよかった。

ただ俺の本当の気持ちを伝えることができれば──。



「翼っ!」

「なっ何よ」

「ちょっと来てくれ、話があるんだ……大事な話が」

教室で弁当を広げてダべっている彼女の腕を掴むと、俺は屋上に向かって歩き始めた。

誰も来ることのできないそこは、階段を照らす電灯も少し薄暗い。

翔さんから鍵を借りた俺は屋上の扉を開けることができた。


「もう!放してよ!」
彼女は俺の手を振り払った。

「翼……」

「何よ。話があるなら早くしてよね」

「お前のことが好きだ」

「なっ!突然何を言い出すかと思えば……この前は楓のことが好きだとか言ってた癖に。もう心変わり?そんな言葉に惑わされると思ってるわけっ!馬鹿にするのもいい加減にして!!」

「……これは俺の本当の気持ちだ。嘘だと思うならそう思ってくれても構わない。この気持ちは変わらないから」

もう迷わない。自分に嘘までついて守りたかったもの、やっと見つけたから。

「千晶……」

「俺の傍に居てほしい。お前じゃなきゃダメなんだ」

「私も……ずっと強がってた。早く自分の気持ちを伝えたかった。千晶が好き。大好きだよ」

やっと手に入れた『真実の愛』……。
愛だの恋だの馬鹿らしいと思っていたが、それは違うってことを翼が教えてくれた。