「いい。こうなったら『ラブラブ大作戦』よ!」

「『ラブラブ大作戦』??」
一昔前の少女漫画出てきそうなネーミングだな……。

「あくまでも演技だからね!幸にも私と翼が双子だってことは知らないハズ!そこを狙うのよ!」

「……ってことはつまり」

「私たちが『恋人同士』ってことを彼女の前で演技するの!当然、私を翼だと思い込んでくれるだろうからっ。そうすれば諦めがつくでしょ!我ながら名案だわ~」

「って!そんなに上手く行くのか?第一、薫にお前が楓だってバレたら終わり……」

「だからこれは一回きり、決行日は今度の日曜日!翼は試合で朝からいないし、ちょうどいいわ!千晶は例の彼女を呼び出しておいてね、頼んだわよっ!!」

「……了解」

という具合である。
いつもながら楓に押されてしまった……。
同時に、流されやすいと言われたことが自分でも否定できないと実感した瞬間でもある。

兎にも角にも後は俺たちの演技次第。
ここまできたらもうやるしかないっ!!




そして……。
大袈裟かもしれないけど『運命の日』がやってきた。
展開としては当然の流れである。
薫との待ち合わせ場所は午後一時にあの公園の『時計台の下』。
所謂、『ラブラブ大作戦』を楓と決めた所である。

俺はもちろん『男』の恰好で楓と一緒に三十分前に到着し、今日の流れについて最終打ち合わせを行っていた。


「もう一度言うけど、演技だからね!そこだけは忘れないでよ!」

「当たり前だろ!これを乗り切れば俺たちは悪の手から解放される!いいな!成功あるのみだ〜っ!」

「……悪の手って何よ。いつから異世界ファンタジーになったの?この話……(汗)」

「行くぞ!!」
大した打ち合わせもできぬまま二人は薫の待つ『時計台』の下へと向かった。