こんな事態になろうとは誰が予想していただろうか……。

幼馴染みと再会と思いきや、その男だったやつがいきなり『女装』してるっていう状況。
俺が薫の立場だったら間違いなく軽蔑するよなぁ~。


しかも……。


『私、千晶のことが好きだった……小さい頃からずっと』


今も脳裏に焼き付いている薫の告白。
俺は彼女のことは好きだ。
けれど、それは『幼馴染み』として……。

だから、

『恋愛』においてはお決まりのセリフとも言えるが、俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもない。




「千晶っ!」

「あ、……ああ」
一時間目の休み時間。
最初に声をかけてきたのは薫の方だった。
てっきり無視されるって思っていたのに──。

「それにしても驚いた〜あんたがこんなとこにいるなんてっ」
その笑いを一生懸命堪えている様子が見ていて非常に腹立つんですけどっ!

「笑いたければ笑えよ……で、どうしてお前がここに来たんだ?」

「千晶の様子を一目見るためにっ!……と言うのは冗談で。実はね、両親が急にフランスへ転勤になっちゃって、私はおばさんの家にお世話になることになったってわけ。で、おばさんの家から近いこの学校を選んだんだけど~」

「な、なんだよ……」

「まさかこんなとこで千晶に会えるなんて!やっぱり私たちって赤い糸で結ばれているのかなぁ~」

「ばっ馬鹿……」

「な〜んてね!本気にした?」

薫はもう気にしてないのかな、あの『告白』。

そんなわけないよな……あいつの性格からして、これはわざと明るく振る舞っているだけに過ぎない。
何故なら、薫は昔から周りに気を使って作り笑いとか平気でするようなやつだから。


「知り合いなんだ」
翼が俺に突然問い掛けてきた。……怒ってる?だって声のトーンが……いつもより低い。

「いやその~つまりだな、前の学校が同じだけでクラスメイトつーか、友達と言うか」

「幼馴染みです。……よろしくね、桐生翼さん」

「……よろしく」

薫のこの全てを知っていますよ的な笑みが、俺には気になって仕方なかった。