結局、四人一緒に行った祭は二人ずつ別行動になってしまったわけである。


その夜。


「うわぁっ!どうしたんだ?楓、そんなとこで土下座して」

千晶がトイレに行こうとドアを開けた瞬間。

「千晶、ごめんなさい!」

「何?何がどうなったんだ?」

なぜ楓が土下座して謝っているのか分からず俺は動揺した。いくら過去を遡ってみても謝られるようなことをされた覚えがない。

「ごめん、実はね……」

彼女は俺に祭であった出来事を全て話してくれた。



「なにぃ~!俺の正体を伶に話しただとぅ~!!」

「……つい口が滑っちゃって!本当にごめんなさいっ」

彼女の必死に謝る姿を見ていたらそれ以上怒る気も失せてしまった。

「……もういいよ。どーせいつかはバレるんだしさ!これで伶の前でも女装しなくて済むわけだしっ!物事は前向きにポジティブにってな!」

「千晶……」

「ありがとう、楓」

と……強がってみたものの。
伶とこれからどう接していこうか考えていた。
『キス』までした仲だしな……。流石に気まずいよな~。
しかし具体的な対策も考えつかないまま夜は更けていく。


次の日の早朝、伶は一つの手紙を残して帰ってしまった。

「俺宛てに手紙……?」
そっか……あいつ八月末までって言ってたっけ。
執事の榊から手渡され広げてみると、

『また会おうな、千晶っ!(はぁと)』

これは……一体。
あいつは俺が『男』だと知りつつ開き直ったのか!?
恐るべし……藤崎伶。

まぁ~これくらい精神的にタフじゃなきゃ初対面の俺を口説いたりしないか……つーかできないよな、フツー。

呆れ顔の千晶。力が抜けた手からは先程のそれが地面にヒラリと落ちたのだった。