呼んでくれた女の子とは目も合わせずに「お~」とだけ返事を返して教室から出ていった。
「あ!あの人だよ!・・・名前なんだっけ?」
「いっ・・いく!!そんなおっきな声・・・拓真君だよ。」
俺の名前も知らないで呼ぶなんて・・・ただ愛想笑いするしかなかった。
「えーっと・・・君、昨日は悪かったね。」
「なんでいくはそんなおっさんみたいなの~!!」
「そんなこと言うなら小夜が謝りなさいよ!!せっかくあたしが・・・」
そう言うといくと呼ばれている方はもう一人を軽くにらんだ。
「昨日っすか?」
「ほら、吉田が君に殴りかかろうとしたじゃない?」
「なんでさっきから「君」って・・・さっきあたしが名前教えてあげたじゃない!!」
「だ・・だって!いきなり名前は失礼でしょ!!じゃぁ・・・君、名字は?」
「森田です。」
「よし森田君。仕切直しね?」
「はぁ」
「きのう吉田のことで小夜が迷惑かけてごめんね?昨日あたし達、謝りもせずに帰っちゃって悪いなぁって思って謝りにきたの。」
「あぁ!」
正直あのときは怖くて吉田って男の先輩しか見えてなかったから、女の人が居たってことしか覚えてなかった。
「別に良いですよ。」
妙な沈黙が続いて、口を開いたのは向こうだった。
「あの、友達になってください。」

![ある幼なじみの恋 [完]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)