別に、たいした理由はなかった。 ただ…なんとなく。 自分じゃない、誰かになりたくて。 校則を守る、利口な自分じゃない、何かになりたくて。 止めとけばよかったな。 何も変わらないし。 左手で毛先を摘んで日に透かした。すると、やわらかいはちみつ色に見えて、ちょっとだけ嬉しくなった。