次の日。
正和は羽田空港行きのバスに乗っていた。

ホテルの部屋で目覚めた時、二日酔いで強い頭痛があった。
その瞬間、昨夜『サラ・ジェーン』で、敦子が自分のことを責めたことが脳裏に浮かんだ。

正和は、敦子とマスターの娘の千賀子と学生時代の思い出話で盛り上がった。正和も敦子もかなり飲んでほろ酔い気分になっていた。

敦子は、店の隅に置いてあるギターを目にした。
そのギターは、マスターが使用していたものだった。

敦子が亡きマスターのために何か歌ってほしいと正和に頼んだ。

千賀子も敦子に賛同するかのように聞いてみたいと頼んだ。

昔、正和はそのギターを手にしてサザンの曲を歌っていたことを憶えていた。
敦子が甘えるようにして正和に頼んできた。

正和は歌うことを拒んだ。

すると、敦子が訳を聞いてきた。

正和は、自分は音楽を捨てた人間だと断った。