「・・・う・・・っ」


 そのうち声までもが抑えられなくなって、カバンの中からハンカチを取り出そうとする。


 だけどハンカチがどこにあるのか分かんなくて・・・代わりに今日返すつもりだったマフラーが手に絡まった。


 

 ・・・少しためらったけど、そのマフラーを取り出してそこに顔をうずめる。

 
 
「・・・好き。」



 言いたくても言えない言葉がふいに口から出る。



「・・・好き、好き・・・。」


 
 でも、それだけじゃ言い足りなくって、さらに言葉が溢れてくる。



「好きなの・・・見てるだけでも。」


 
 そう、それだけで幸せだったんだ・・・。



 わりと混んでいるバスの中なのに、まだ誰1人とあたしが泣いてることに気付いてない。


 ・・・ううん、ホントは気付いてんのかも。


 だってあたしが乗ってから、あたしより後ろに座ろうとする人が1人もいない。


 
 チラッと外を見ると、雪がすごく降っていた。

 
 今年初めて降った雪だというのに、あっという間に積もってしまいそうだ。



 ・・・この雪と一緒にあたしの想いも溶けてなくなってしまえばいいのに。


 でも雪は勢いを増すだけで、とてもじゃないけど溶けてくれそうにはなかった・・・。