白い月〜destiny〜

タクシーの運転手は 呑気に世間話をしてくるが 僕の耳には全く入ってこなかった。

運転手はそのうち諦めて黙った。


僕は両手で顔を覆って深い呼吸をし 何とか気持ちを落ち着けようとしていた。

しかし そんなことで僕の気持ちが落ち着くわけはなかった。


変に思った運転手がバックミラー越しに僕をチラチラと見ている。

「お客さん 大丈夫?気分でも悪い?」

「いえ…。あの…もっと急いでもらえますか?」


運転手は頭を掻きながら答えた。

「いやー。こうも混んでるとねぇ。できるだけ急ぐようにはするけどねぇ。」


タクシーが赤信号で止まる度 僕の焦りは大きくなっていった。


くそっ…!


時間だけがどんどん過ぎて行くような気がした。