「え、うん」
言われたまま顔をあげなおす鈴璃。
「私達のほうに、ゆっくり歩いてきて。ゆっくりだよ」
指示され、足を進める。
一歩、二歩、三歩。
ゆれる少し長めのスカート。
背筋は無意識でいつもどおり真っ直ぐ。
「はい、とまって。そこでくるっと回転。右回り」
言われて弧を描くと、
衣装のスカートと鈴璃の黒髪が、
ひとつの芸術になってふわっと浮いた。
「そこで、いらっしゃいませ、お嬢様」
「……いらっしゃいませ、お嬢様」
「はうう~」
ばたばたばたばた~っ。
日常では絶対聞けない鈴璃の声を聞き、
女子生徒の半分が至福で倒れた。


