……誰の話? 鈴璃は、出しそうになった言葉を胸の中でとめた。 足の出し方まで鈍くなる高志に歩調をあわせ、高志の心が戻ってくるのを黙って待つ。 その間に思い出すのは、小さかった高志のこと。 紅茶にミルクと砂糖を混ぜるのが好きで、今よりもずっと小さな両手でマグカップを持ち、 そのカップの中で紅茶に垂らしたミルクが模様を描き、 かき混ぜると底に沈んだ砂糖と一緒に溶けていくのを、わくわくと眺めていた。