「遅くなっちゃうよ、ひとりだと危ないよ」
鈴璃が夕食を作るのが決まっている日は、
鈴璃が帰宅途中で買い物によることを、弟は知っている。
買い物にいくスーパーは帰宅路からやや外れた場所。
弟はその寄り道が心配らしく、帰宅の電話にでると必ず鈴璃を迎えに来たがる。
鈴璃としては、この暗がりにひょこひょこ家を出てくる小さな弟の方が数倍心配だ。
主観と客観から考えて、自分よりも弟の方がはるかに持ち運びされやすい。
「え、なに?あの可愛い弟くんが迎えに来てくれるの?いいなあ~、私も会いに行く、それで私を送ってもらおーっと」
自分の電話をしながら、鈴璃の電話にも割り込んでくる香織。
そう、こういう人種が世にいるからだ。


