「いいから話しなさい。悪いようにはしないから」
何度も言うが、店は現在とても忙しい。
こうやって、ふたりで内緒話をしている暇はない。
鈴璃は無駄話をうちきるために、ありのままを話した。
「……午後、私の時間が空いたら、一緒に見てまわろうって約束してあるだけよ」
「高志君と?」
「家族と」
「ふむ」
香織は、何かを考える。
鈴璃は、すぐにウエイトレスの仕事に戻った。
少し間さぼった分、かつかつ動いて取り返し始める。
やはり鈴璃目当ての客は多かったらしく、それでまた店は活気づいた。
「これでまた品切れの時間が早まりそうね」
香織は、つぶやいた。
鈴璃の空き時間もその分増えるだろう。
「これは親友として、ひとつ思い出をつくってやらねば……」


