「まさかの二人ですか？」
「まさかの二人ですよ。まぁ、午後から七海ちゃんが帰ってくるからね。それまでの辛抱だよ」

ドアが開く。
スーツを着た男が入ってくる。
二人は同時にいらっしゃいと言う。
良く見る顔だ。
いつもオムレツとコーヒーを頼んでいる。

「いらっしゃいませ。いつも有難うございますね。ご注文が決まりましたらお呼び下さい」
「あ、覚えてましたか」

男が苦笑いを浮かべる。

「今日もオムレツで？」

奥から宇佐兎が出て来る。

「あ、はい。それとコーヒーで」
「はいはい〜」

宇佐兎がキッチンに消える。

「えっと…今日は二人ですか？」
「そうなんですよ。他のバイトは休みらしくて」
「そうですか…」

男が寂しそうにするのを苅麻は見逃さなかった。

ふむ…。
恐らく七海の事だろう。
七海は男性客に人気があるし、七海目当てで来る人も居るくらいだ。
当の本人はあいからわずの天然ボケっぷりで気付いてないみたいだが。
…まあ、莞爾目当てじゃ無い事を祈ろう。