相合傘


「…ぅ、ん」
 
携帯の着信音で、アキが起きてしまった様だ。
目をゴシゴシと擦った後、パチパチと瞬きを2、3回繰り返した。

「お、おはよう」
「ん~、オレ、寝ちゃってた?」
「うん、ぐっすりと」

そう言いながら俺は携帯を確認し、エプロンを身に付けた。
そして、はぁぁ…と大きな溜め息。

「どした~?」
「何でも、ない…」

ヒロヤくんからのメールには、今週末にデートのお誘い。
しかも、何が何でも来いって…。
俺はチラリと後ろのアキを振り向いた。
やっぱり、アキとヒロヤくんって、何か似てるね。

「ん、何?」
「いや…、なんでもない」

あはははと、どこか引き攣った様な笑いに、アキは少し首を傾げた。

それがどうかした?
っていう様な返事が返ってくるだろうけどさ
そんなのどうでもいい
って言われるだろうけどさ、

…言えない、よな……。

俺に了承する気は無かったけど、形だけでも付き合うことになってしまったって。
しかも、相手がアキが嫌ってた



ヒロヤくんだって…。



「今日の晩飯何?」
「今年最後の冷やし中華」
「え~最後!?」

俺はアキにバレない様に、もう一度溜め息を吐いた。