…コイツ、本当に苦手。
そう思いながら、早足で帰るものの、
それとは反対にゆったりとした足取りで俺についてくるヒロヤくん。
「…付いてこないでくれない?」
「え~、彼女の部屋くらい知っておきたいでしょ」
「……ストーカーで訴えるぞ」
「えぇ~、それはヤダ」
前々から思っていたけど、なんかアキとヒロヤくんは似てる。
ムカつくところが…ッ!!
あ、あと喋り方と言うか、声が少し似てる気がするような
…そうでもないような。
歩いているうちに、いつの間にかアパートの前まで来てしまった。
家まで知られてたまるかっ!!と、どうしようか悩んでいると、ヒロヤくんが俺の隣を離れて行った。
「お~い、何やってんだ?こんなところで」
「…?」
ヒロヤくんが話しかけたのは、あの黒スーツの人たちだった。
え、何っ!?何かメッチャフレンドリーに話しかけてない…!?
「ヒロヤ様!何故貴方がこんなところに?」
「ん~、ちょっとストーカー?」
「はい!?そんな事なさってはなりません!!」
「あはは、冗談じょーだん」
ヒロヤくんと黒スーツの人たちが話し込んでる隙に、俺は素早くアパートの敷地内へ足を滑らせた。
だんだん遠退いていく話し声に、安心してだろうか、溜め息が漏れた。
エレベーターに乗り込むと、体の力が抜けて、壁に背中を預けた。
降りてからそろりと下を覗けば、困った様な顔してきょろきょろと辺りを見渡すヒロヤくんがいた。
良かった…、ちゃんと逃げ切れたみたいだ。

