相合傘


ちょ、ちょっと待って!
この写真に写ってる人、



アキじゃない!?



「あ~、すみません。知りませんねぇ」
「そうですか…。有難う御座いました」
「いえいえ、御力になれなくて御免なさいね」

するりと離される手。
アキは直様俺の手を取って、スタスタと道を歩き出した。

「ち、ちょっと、さっきの写真に写ってたのアキだろ?何で自分だって言わないんだよ」

小声で尋ねて、握られている手を離せと言わんばかりに引いた。
離れた俺の手には、アキの手の跡がくっきりと残っていた。
…こんなに強く握ってたのかよ。

「ショウ、今後アイツ等に会っても構うな」
「な、何で!?」
「何でもいいからッ!!」

そう言って、また歩きだすアキ。
俺は一度振り返って、さっきの人たちを見た。
また、道行く人に写真を見せながらアキの情報を得ようとしている。
あんなサングラスを掛けているから良く分からないけど、何だか必死に見える。

「なぁ、話戻すけどさ、何で女装すんの?」
「…ど~しても聞きたい?」
「ど、どうしてもってわけじゃないけど…、まぁ、聞きたい」

アキは、ん~、と口元に人差し指を当てて、しばらく何か考えた。
そして一つ笑みを零すと、その人差し指を俺の顔の真ん前に突き出した。

「な、何」
「秘密♪」
「…は?」
「何で女装してるかは、秘密ってことで」
「ここまで引っ張ってそれかよ!!」
「だって~、秘密があるのが女ってもんでしょ?」
「お前は男だろ!!」

全く、ワケ分かんねぇよコイツ~ッ!!
…まぁ、それがアキなんだけどさ。

話さないってことは、別に理由なんてないのだろうか。
 
ただ、したいから?
気まぐれ?

なんて思いながらも、頭に過っているのはさっきの黒スーツの人たち。
持っていた写真に写っていたのは紛れもなくアキ。
でも、アキは自分だとは言わなかった。
 
何でなんだろう。
てか、何なんだ?あの黒スーツの人は。
まさか、借金取り?

……んなわけ無い、か。(多分)