次の日の朝、アキと出会った次の日ぶりに、インターホンの乱鳴が部屋を襲った。
「あー、はいはい」
玄関を開けば、清々しい太陽の光と深夜に振った雨の香りが微かな風に乗って部屋の中に入ってくる。
「おはよ、ショウ」
「ん、お早う」
ニッコリと微笑むアキに笑顔を返して、部屋の中に入れた。
昨日、お互い今まで通りに接することを決めた俺達は、今日からまた、今まで通りに戻ることにしたんだ。
でも、今までと違うことがある。
アキが、“アキちゃん”ではないこと。
その証拠に、今日のアキはピンクのフリフリでも、イチゴ柄でもない服を着て、茶色のロングヘアーの鬘は付けていない。
藍白を基調とした半袖の上着の下に、紫紺のTシャツ。
そして綺麗な漆黒の髪は、今日も無造作に弄られていた。
「わ~、久しぶりだな。ショウのご飯」
「そうだな。アキ、ここ10日位ちゃんと食べてた?」
「まぁ、そこそこ」
もう一つ、変わったことは名前の呼び方。
“アキちゃん”もアキラくんも同じ人だから、『アキ』って呼ぶことにしたんだ。
何故『アキラ』と呼ばないかというと、アキは俺の事を『ショウ』って呼ぶから。
アキは俺の事を呼び捨てで呼ばないから、俺も呼び捨てじゃない方がいいかなっていう(一応)配慮。
「なぁ、今日買い物付き合ってくれない?」
「いいけどー、何で?」
「マグカップ買いたいんだ」
結構前に買いに行こうとした時、“アキちゃん”が俺の玄関前に倒れてたり何たりで。
結局、今の今まで忘れてたんだよなぁ。
「ふ~ん、マグカップかぁ。オレも買い直そっかな」
「え?」
「お揃いにしよっか~♪ねッ?」
「…えー、ヤダ」

