だから
「お願い、あるんだけど」
「何?」
「…戻ろう?」
「……」
俺は“アキちゃん”しか知らない時の俺に戻るから。
だから、アキラくんは“アキちゃん”のままでいいから。
「俺、“アキちゃん”といたい」
お願いッ!と額の前で手を合わせて、俺はぎゅっと目を瞑った。
その頭に、ぽんっと優しく乗ってくる掌。
ゆっくりと見上げた“アキちゃん”は、優しい笑みを浮かべていた。
「…無理だよ」
「ぇ…?」
「だって、ショウは“アキちゃん”が男ってちゃんと分かってるじゃん。オレは何だかんだ言っても男だから。ショウの前でだけって言っても、ずっと“アキちゃん”でいることは出来ない」
だから、ショウは“アキちゃん”といることは無理でしょ?
「…何、それ」
確かに、知ってしまったからそれを知らなかったことにするのは出来ない。
なら、“アキちゃん”だけじゃなかったら…
「じゃあ、言いなおすよ…」
アキラと一緒にいたい。

