…俺が、本当に言わないといけないことは「ありがとう」とか、それとか…

「あ、あのさ…、アキラくん」
「…何」
「これからも、今まで通り俺を…避ける?」

いつも、“アキちゃん”は俺を困らせてばかりだった。
いっつもいっつも、俺は迷惑してた。
なら、俺が“アキちゃん”を困らせたって…

肯定も否定もしない“アキちゃん”は、くるりと振り返ると歩き出した。
…何でいつも人の質問に答えないんだよ。

「ちょっと、待てって」

正面まで走って、俺は“アキちゃん”の手を握った。
きっと、俺が手を握ったことに驚いているのだろう。
目を丸くして俺を見下げる“アキちゃん”は、かなり驚いた表情だった。

「う、嘘吐きになんのかよ!!」
「…は?」
「い、言ったくせに」
「何て」



俺の事、守るって言ったくせに!!



「…ぁ、や、えと…ゴメン」

つい感籠って張り上げてしまった声は、ビルとビルの狭間で響いて、空に吸い込まれた。

ちょ、ちょっと落ち着け、俺。
何、暴走してんの…?
だぁーーー…ッ!!しかも手なんか握ってるし!
俺、心と体が矛盾してるって!!

ぐるぐると心も目も回していると、俺の手の上に“アキちゃん”の手が添えられた。

「無理、してんじゃねぇの?」
 
顰めた顔で微笑まれたら、俺はどんな顔して返事をすればいいか…分からない。
俺は“アキちゃん”の顔を見上げないまま、「大丈夫」と返事をした。
 
うん、大丈夫。
手、震えたりしてないから。

「約束、したじゃん」
「…したよ、でも、オレは男。ショウが嫌いな男なんだぜ?」
「そんなの、俺が一番分かってるよ」

でも、この10日間……、正直寂しかった。
それは例え“アキちゃん”が男でもいいって、俺に“アキちゃん”は必要って分かったから…