腕を掴んでいた手の力が少し弱まったのが分かって、俺は咄嗟にヒロヤくんから離れた。

「ふーん、黙ってるってことは証拠なんてねぇんだろ?女って事だろ?」
「……」

何も言えないまま、しばらくの睨み合い。

「それでも、男って言い張る?」
「お、おぉ」

…やっぱり

「なら、服を脱がせて…」

この人は…

「調べるまでだ」



アブナイ人だ―――…ッ!!



男なら上半身裸になっても別に平気だよなって、何その満面の笑みはっ!!
さっきまでの不機嫌そうな顔はどこに!?

ゆらりと上げられた手。
それはゆっくり、ゆっくりと俺との距離を詰めてくる。
近付いてくる度に、俺は足をずるずると引いて後退った。

こ、これは相当ヤバくない?

その時、とんっと背中に何か当たった感覚。
…ぇ、壁なんか無い筈。
まさか、この前の恨みか何かで最初から俺狙って、誰かとつるんでた!?

そして、後ろから肩を掴まれて、俺は身動きが取れなくなってしまった。
恐怖で、背中に冷や汗が流れる。
でも、目の前にいるヒロヤくんも、俺と同じ様に固まっていて……

「だ~め!」

今起きている出来事を楽しんでいる様なその声は、俺の耳元を擽った。
その声は、俺が数日前まで…

「脱がせたりなんてさせないよ?」

いや、もしかしたら今も

「そんなコトしていいの、アタシだけだから」

聞きたいと思っていた声。

「君、誰?」





「アタシは…ショウの彼女」