「…今、なんと?」

寝ぼけてんのかコイツ…と、俺はパチパチと大きく瞬きをした。
いや、頭どうかしてんだろ。

「付き合って欲しんだけど」
「な、なんで?」
「好きだから」

何、このストレートさ。
“アキちゃん”みたいだ…って、考えてる場合じゃない!

「お、俺は男だぜ?」
「いや、絶対女だ」

…その自信はどこから?

「マジで男だって。や、止めようよ」

勘弁、と掴まれていない方の手でヒロヤくんを押し返す。
付き合うって、何言ってんだよ。
強引に腕を引かれて、バランスの崩れた体はヒロヤくんの胸の中へ。

だ、だから…ッ!!

こういう風に相手の気持ちも考えないで、行動とか行為に及ぶからお前が嫌いなんだー!!

ぐいぐいと押し返す俺の手を、ヒロヤくんは握った。
その事に少し驚いて顔を上げれば、その真っ直ぐな視線と視線が交わる。

「…な、なに…?」
「本当に、男?」
「あ、ああ。そうだけど?」

見透かす様な眼差しは、ゆっくりと俺を視線で撫で下ろした。
不満げに片方の眉を上げ、納得のしない顔。

「証拠は?」
「…は?」
「証拠!!」

そんな怒った顔をして、声を荒げられても…。
し、証拠と言われましても…。

「ないん?証拠」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
「けど?何」

…そんな、見せれる証拠なんてない。
…最初っから。