それから、俺はヒロヤくんに手を引かれるがまま。
歩きながら話した内容は、大学生なの?とか、一人暮らし?とか。
べらべら喋ってるのは向こうで。
こっちは質問に答えて、適当に相槌打ってるだけで。
それでも楽しそうに笑いながら話すから、何がそんなに楽しいのかって思う。

けど…、“アキちゃん”もそうだった。

大体喋ってるのは向こうで。
こっちは適当に返事を返すだけで。
それでも凄く楽しそうに、笑っていた。
それに呆れた俺は、一度だけ訊いたんだ。



『何がそんなに楽しいんだよ。俺、そんな喋ってねぇのに』

きょとんとした顔して、直ぐに“アキちゃん”は吹き出した。
そうじゃないよ、と。

『楽しいんじゃなくて、嬉しいんだよ』

『…は?』

『ショウと居れることが嬉しいんだ』

そういいながら、グシャグシャと俺の頭を掻き回して、にっと笑うアキちゃんはとても満足気だった。
ボサボサになってしまったであろう髪を適当に直しながら、よくそんな恥ずかしいセリフ言えるなぁ…と思った。
でも、それを言われたのは自分。
そう思うと、何だか顔が熱くなったのを覚えている。



ふと、ヒロヤくんの足が止まった。
それに釣られる様に、俺は下げていた顔を上げた。

あー、何か今変な事(というかちょっとムカつく事)思い出していたから、何処の道通ってきたか覚えてない…。

気が付けば、小さな公園に来ていた。

…うわ、あの時と同じ様な公園。
唯一違うのは、あの公園にはブランコしかなかった遊具が、ここはブランコも滑り台も、ジャングルジムもあることだ。

「あのさ、本当は訊きたいことあるんだけど」

俺に向き直ると、離される手。
急に真剣になった顔付きは、なんだか別人の様だった。