そう、優奈に言って、更に沈んだ気になった俺。
自分の言葉に苦しむ程、…そんなにショックなことなんだろうか。

アキちゃんが男だったことが。

……あれ?でも、そんなにというか、別にあんまりそこは気にならない気がする。
じゃあ…、何?
 
アイツが俺に接してこないから。

だから、こんなに沈んでんの?
相手は結局、俺の嫌いな、トラウマを抱く程大嫌いな、



男、なのに…?



バイト帰りにスーパーへ寄ろうと、家とは反対の方向へ。
この時間は通行人が多く、そんな時に俺は堂々と道の真ん中を歩ける人ではないから、自然と端を歩く。
その時、急に路地へと腕を引っ張られたから、目が付いていかなくて。
パチパチと瞬きを繰り返して、暗さに慣れた頃。
腕を引っ張ってきた相手の顔を見て、絶句した。

「…ぇ、え~と、ヒロヤくん…?」

「お、覚えててくれたんだ」

その人、ヒロヤくんは優奈を連れ去ろうとした挙句、俺に馬乗りしてきた最低ヤロー。
俺にとって、2番目のブラックリスト加入者だ。

…ちなみに、1番目は“アキちゃん”。
ヒロヤくんとは違う意味での最低ヤローだけど。

「な、なんか用?」

「手、結構酷い怪我だったんだな」

左手に巻いている包帯は、この暗い空間では白く光って見える。

「あん時、暗くてよく見えなかったから」

…だから、なんですか。
てか、「なんか用?」って訊いたのに、質問の答えになってねぇし。

俺の怪我をしている方の手を優しく撫でて、そっと手を離した。

なんだろ、雰囲気が柔らかくなった?
なんか、優しい…?