外の何処かを見ていた目が、俺に向けられて、少し細くなった。

その、顔。
その、悲しそうな顔。

そういう表情をした“アキちゃん”を見るのは初めだった。

「ゴメンな…でも、安心して」

オレは…“アキちゃん”は、もう自分の意思でショウに会いに行ったりしないから。

「……ぇ」

「花屋のバイトも、辞めたし…」

これから会うことは、あまりないだろうな。
ズボンのポケットを探るとあるモノを取り出し、アキラくんはそれを俺に投げ渡した。
窓からの淡い光を反射する、銀色のソレは…

「だから、ソレはもういらない。返すよ」

“アキちゃん”が勝手につくった、俺の部屋の鍵。
視線を手の中の鍵からアキラくんに向けるけど、目が合うことはなかった。
アキラくんの口が開かれることもなく…。
俺はゆっくりとベッドから腰を上げた。
じぃっと窓の外を眺めるアキラくんの前から、玄関へと足を進める。
その足は、何故か少し重たく感じた。

「…手当て、ありがとう」

それだけ言って、玄関から足を踏み出す。
スローモーションをかけた様にゆっくりと閉まるドア。

小さく…、本当に、小さくだけど…



「ゴメンな」



そう、聞こえた気がした。