優奈の焦った声、カタンという衝撃音は優奈の携帯が落ちた音だろう。
声が遠くなって、会話が少し聞き辛くなった。
俺は何なのかよく分からないで、そのまま携帯に耳を当てる。

『いいじゃん、合コン来るってことは、お持ち帰りOKってことなんだろ?』

聞こえてきた男の人の声は、ヒロヤくんのものだった。

『そんなワケないじゃない!離して!!』

かなり焦った優奈の声に、ジャリっと砂を踏む音。



まさか、連れ去られる!?



俺は携帯を切らずに耳に当てたまま、そこから飛び出した。

「おい、ショウ!?」

カウンターの前を走り抜けて、階段のところで人にぶつかりそうになったけど、謝る事もせずに駆け上がった。
店の外に出て辺りを見渡すけど、優奈の姿は見当たらなかった。

『こんな人気の無いところに呼び出したのは、こういうことだったのね!!』

…人気の、無いところ。

俺はビルとビルの隙間に足を踏み入れた。
ここら辺で人気の無いところといえば、さっきの公園!

「…ッ、優奈!!」
「ショウ!!」