そうだよ、怖いよ。



アキちゃんも俺の様な気持ちになったら、嫌だから。

分かるんだ。

そうなったら、どれだけのリスクが出てくるか。
どれだけの当たり前だった事が出来なくなるか。



どれだけ、視野が暗くなるか。



「…アキちゃん、無理するなよ」
「本当に大丈夫だって!」

俺は、その笑顔を本当に無理の無い笑顔として、見てていいのだろうか。
アキちゃんがいいなら、いいんだけど。そう言って、笑い返してもいいのだろうか。
俯いたまま、手を引かれるがまま歩いていると、アキちゃんは立ち止って、ピンッと俺のおでこを弾いた。

「そんな顔しない!!」

頬を膨らませたその顔は、本当にいつものアキちゃんで…

「…ゴメン」

やっぱり、俺の考え過ぎみたい。

「そんな事より、早く帰ろッ!冷やし中華が食べたくて仕方ないしー」

乗り込んだ電車は、朝よりも随分人が少なかった。
運良く座る場所を見つけて、そこに座った。
窓の外の移り変わってゆく景色を眺めていると、窓越しにアキちゃんの顔が見えた。

俺を見て、嬉そうに微笑むその顔。



…何だよ、気持ち悪ぃ…。