追加で炊いた御飯に出来たてのドライカレーを盛ったお皿を、アキちゃんの前に出すと、パクパクと食べ始める。

…熱くないのだろうか……。

結構な量の食糧を彼女の前に出したのだが、いつの間にかあっという間に平らげていた。

ちゃんと噛んでなさそう……丸飲みしてるみたい。
あんなに沢山食べているんだ。
お腹は大丈夫か?
俺だったら、胃が破裂しそうなくらいだ。

お皿の中のドライカレーが半分ほどになったころ、アキちゃんは俺に言った。

「ピンクとか、嫌い?」
「うん…、ピンクとか、フリフリなのとか……ちょっと苦手かな」
「ふ~ん、スカートは持ってないの?」
「あるよ」
「穿かないの?」
「……」

俺はその言葉に固まった。

アキちゃんはスプーンに乗せたドライカレーを一口食べて、口をモゴモゴとしながら続けた。

「一見、男の子に見えるけどさ、目ぇ大きいし、髪はそこら辺のイケメン芸能人と同じくらいの長さ、よ~く見たら、女の子に見えるから。それに、どちらから見てもイイ顔してるもんなぁ」

アキちゃんはそう言いながら、くるりとスプーンを回した。

「……お~い、ショウ~?聞いてますかぁ?」

俺の目の前でひらひらと手を振るアキちゃん。
うん、一応話は聞いてる。

…でも……

「…あ、ゴメン。穿かないよ、俺は」
「え~、何で?スタイルイイのにぃ~」

あはは、オヤジみたいなことを言うね…。
大食いで、頼りないというか…頼れることは何も無さそうで、俺に迷惑掛けるし、性格が何処となく掴めないコイツに……


 
俺がスカートを穿かない理由、
男っぽく振る舞う理由



それを教えてもいいのだろうか。



ちらりと視線を寄こせば、お皿は空っぽ。
グラスの縁に口をつけたアキちゃんは、俺を見ていた。

「…なんか、悪い事言っちゃった?」
「ううん、そう…じゃない」



……とは、言い切れない。