「狐のお面?ははっ。また随分演技掛かった事するねぇ」

春樹から事情を聞いている朱雀さんは楽しそうに笑った

「笑い事じゃねーし!俺の話ちゃんと聞いてる!?」
「うんうん。御免ね?で、何だっけ。誰だか正体は分からないんだね?」
「そう。身長は俺よりちょっと高いくらい…だったかな。確実に男」

朱雀さんはにこにこ笑ったままだ。
ソファにうつ伏せに寝転がった卓真が足をぱたぱた動かす。隣に座ってる俺にちょいちょい当たってぶっちゃけ痛い

「強かったの?春樹、殴り合いのケンカとか結構してそうだし」
「卓真は俺にどんなイメージ持ってんだよ…まー、んー、強い…んじゃね?」
「曖昧だなー」
「でも、何でいきなりこんな事したんだろ?相手は春樹に狙いを定めてたのかな」

漢文の課題を片付けていた爽樹が顔を上げた
俺は卓真の足首を掴んで動きを封じて身を乗り出した

「どういう事だ?」
「おい陸っ手離せっ」
「ん、だからー。あたし達の中の誰でも良かったんじゃなくて、春樹じゃないと駄目だったのかな?って」
「あー。成る程な――…」
「陸っっっ離せってっ」