「此方(こちら)です」

ゴトン。と机の上に置かれた物は、現代人なら毎日見る、日常に溶け込んだ電気機器
真っ黒な携帯電話
デザインは少し古い、日本の携帯会社の、薄型スライド式
大きな液晶とカメラ
ストラップは何も付いていないそれは、朱雀さんの言う「不思議な物」とは思えなかった

「何すか、これ?ケータイ…ですよね?」

陸が指を刺して朱雀さんに顔を向けた

「そう。ケータイ。今期から1つ古いデザイン。まぁ、日本ってすぐに新機種出るから、これも新しいタイプなんだけどね」
「これ、不思議な物ですか?何か普通のケータイにしか見えないけど…」

爽樹が自分の白い携帯と見比べて呟いた

「問題なのは中身。これ、どこにあったと思う?」
「…ラスベガスの現場では無いんですか?」

慧が静かに聞くと、朱雀さんは小さく頷いた

「そう。確かにそうなんだけどね…まぁ、中身を調べてから教えてあげる。卓真、解析してみる?」
「してみるしてみる。気になるし」

卓真が差し出された携帯を受け取った。