バンッ

壁を殴る音。
「・・・くそっ」

俺は何をやってるんだ。
俺は優を裏切った。

1人壁にもたれかかっていると
廊下を走る音が聞こえた。
そしてすすり泣く声も。

見れば、
「綾!?」
「・・・空っ」

綾は泣いていた。
「あっ空!
さっきはごめんね。
叫んじゃって・・・」
「平気だけど・・・
どうしたの?」

綾乃は一瞬ためらって言った。

「優に言われた」
「何を?」
「お前じゃ・・・駄目って」

この言葉を聞いて分かった。
綾乃は優を好きなんだ。
薄々は気づいていた。
だけど心のどこかで
そうじゃないことを祈ってた。

だって綾乃がビー玉の少女だから。
俺の初恋だから。

「そっか、綾乃は優が好きなんだね」
「・・・ぅん」

俺は悲しさをこらえて、
綾を抱きしめた。
そして彼女の頭を撫でた。

ずっと思ってた。
彼女に触れたい、と。

でも心の中で誓った。
これが最後だ。
抱きしめるのは最初で最後だ。

綾は俺の胸の中で泣いた。