彼女は何度も呼んでいた。

「優・・・優っ」

優の名前を。
「・・・沙羅」

沙羅・・・
彼女の名前は沙羅っていうんだ。

優は彼女の名前を呼んだ。
女嫌いの優が・・・

心が痛む。
ズキズキと。

これ以上見たくない。

優が好きと気づいた今、
この光景をこれ以上見たくない。

あたしの体が勝手に動く。

「綾っ!?」
唯一こう呼ぶ空の声も、
今じゃ耳に届かない。

あたしは無意識に走り出した。

この2人の光景を見たくないから。

これ以上胸の痛みに
耐えたくないから。