私の頬にあたる冷たい風。 かすかに匂う塩の香り。 ザザ―…ザザ― 耳に響く海鳴り。 ここは……… 「海……」 キラキラと光る黒い海。 「もうちょっと近くまで行こうか!」 先生に手をひかれる。 「海だぁ……」 海なんて、何年ぶりに来ただろう… 昔はよく家族で来てたなぁ。 今思えば懐かしい。 「でかいなぁ…!」 桐谷先生はそう言うと大きく腕を空に向かって伸ばす。 「ほんと…大きいね」 私の熱くなった目を冷たい潮風が冷やしていく。