ラブレター

加藤のスキー板はこれ、ビンディングはこれ、ワックス、ブーツにストックと、上手い選手の真似をし、良いと聞けば同じ物を持つ。

親は子供にそれらを身につけさせるのがステイタスであり、子供は親の期待と彼らに近づくため必死で練習に励む。


たまにある大会はスキー技術だけでなく、上手い選手から色々な知恵を盗むチャンスでもあった。

もちろん加藤君のような選手は沢山の視線にさらされ、研究されているのだろう。
実際同級生の男の子は加藤君について色々な情報を得ていて、仲がいいわけでもないのに得意げに私に話して聞かせてくれた。

しかし加藤君の方からしたらチーム名くらいは知っていても、私たちが誰か知らないわけだから、同じ選手でありながら私たちはある種熱狂的なファンのようであった。