気づけば、あなたが

「陽介、喉渇いちゃったから寄っていかない?」



坂本佳奈は、ニコニコしながら陽介を呼んだ。



まさに春の季節を楽しんでいるかのように、佳奈は幸せそうだった。


俺はまだ、自分の口から杏に引っ越す事を言ってない。



あの日から、ズルズルとここまで来てしまった。



こんなんで
いいのか!



俺はいつまで
自分に嘘をつけばいいんだ?



かと言って
いまさら佳奈を突き放すことが
簡単にできるのだろうか・・・?




「陽介・・・?」


佳奈は陽介のそばに寄って来る。



佳奈は心配そうな表情で、顔を覗き込む。


「ああ・・・ゴメン」


二人は喫茶店に入って行った。




さっきまで
杏たちがいた場所に



すれ違う時は
いつまで経っても
交差することはないのだろうか?



平行線を辿って行かなければならないのか・・・



陽介は
初めて真剣に
恋愛の事を考え始めた。